皆さん、こんばんは
今回は最近報道されたこんな
珍事件のご紹介から・・・
「婚姻届」偽造してまで元妻連れ子の女子高生と…
元妻の連れ子だった女子高校生と結婚するため婚姻届などを偽造したとして、
兵庫県警が、元税理士の男(57)を有印私文書偽造容疑で逮捕したことがわかった。
男は地元の市役所に元妻との離婚届を出した翌日、女子高生との婚姻届を提出して
受理されており、戸籍上は「夫婦」の状態。女子高生は市役所からの通知で結婚に気付き、
家裁に婚姻の無効確認を求めて 調停を申し立てている。
捜査関係者などによると、男は4月、婚姻届の妻の欄に女子高生の名前を書くなどしたほか、
未成年の結婚に必要な親権者の同意書も、女子高生の親権者の祖父母と同じ名前の印鑑を
押すなどして偽造した疑い。
男は「子どもの頃から知っており、好意を持っていた。
自分のものにしたかった」
と容疑を認めているという。(以下略)
(2010年5月14日 読売新聞)
自分の継子に執心した揚句に「無理やり結婚しちゃえば誰かに取られないだろ」って、
まあトンデモナイ義理の父親がいたもんですね・・・
さて、このトンデモ義父の記事を読んで、ちょっと思い出した伝説というか怖い話があります。
江戸時代の怪談集『
諸国百物語』に収録されている次の話です・・・
※ちなみにこの『諸国百物語』は現代でもよく知られている「百物語」の最も古いものだそうです
「遠江の国堀越と云ふ人、婦に執心せし事」 ※現代語訳(かなり意訳)
そのむかし、遠江の国に堀越の某という分限者(金持ち・有力者)がいたという。
彼は16歳で長男を授かり父親になった。やがて時が経ち、この長男が16歳になったので
長男に妻をめとるになった。その妻は長男と同じ16歳であったが、非常に美人で麗しく
また気立ても良く利発な才女であった。
ところがこの堀越の某は何が気に入らなかったのか、長男の新妻と全く口をきこうとせず
顔を合わすのすら避ける素振りであった。周りの者が心配して「ご当主様にあられては、
若様の新しい嫁御がお気に召さぬようですが、何か手落ちがありましたでしょうか?」
と問うと、「いや何も悪いところはない、息子と仲睦ましければそれでよい・・・」
と答えるのみであった・・・
そしてそれから3年もすると堀越の某は原因不明の病で床に臥しがちとなってしまった。
長男の妻が看病しようとすると、「病床は汚れてむさくるしいものだ、そなたのような
若い女性が立ち入るべきでない」と自ら近づけさせようとしなかった・・・
遂には容体が悪化し、明日をも知れぬ身となり、さすがに長男の妻も病床に侍り、
手をさすったり、顔を拭くなど甲斐甲斐しく看病していたが、たまたま姑も長男も
傍におらず、部屋には堀越の某と長男の妻だけになった或る時、
病室の中から、物凄い轟音と女性に悲鳴が響き、驚いた家族がふすまを開けると・・・
あさましや・・・堀越の某は
人頭蛇身の化け物に変じ、長男の嫁に三重に纏わり
締めつけている!驚いた家族が駆け寄ると、体を震わせ、大きな咆哮をあげ、
体から津波の如き水を上げ、屋敷もろとも長男の嫁を地面に引きずり込んでしまった・・・
化け物が消えた跡には大きな沼地が残るのみであった・・・
かつては天気の良い日には沼の水底に屋敷の残骸などが見えたそうである。(おわり)
言ってしまえば。堀越某は不幸なことに、長男の嫁、すなわち義理の娘に倫ならぬ恋を
抱いてしまったのです・・・ただ彼は生来真面目な人間だったのでしょう、
抱くべきでない想いをこれ以上膨らませないために、彼女をなるべく遠ざけて
いたのでしょう。悲しいかな、その結果、恋煩いとなり命まで削ることに
なってしまうのですが、今わの際のその一瞬に(おそらくは理性の箍が外れて)
わが身の情念によって、大蛇に変じたということなのでしょう・・・
女性が情念、恨み、嫉妬によってわが身を蛇身に変じさせることは
日本の伝承ではよくあることですが、堀越の某のように男性がそうなることは
あまり聞いたことがありません・・・
※有名なのは能や浄瑠璃の題材にもなった『道成寺縁起』の清姫(写真↓)
さて、この堀越の某ですが、南北朝時代の名将で、晩年を袋井市の堀越で
過ごしたという
今川了俊の子孫である
堀越氏に比定することができましょう。
実は怪談話の中には実際にあった事件や、当時の世情を怪談話として
パロディ化し、揶揄したものが少なくありません・・・
史実として確認できるものではありませんが、或いは袋井の豪族であった
堀越氏の一族の中に、こうした舅と嫁の情念による凄惨な「
黒歴史」が
あったのかもしれませんね・・・
無論、憶測の域を出るものではありませんが・・・
以上、長々と講談してしまいましたが、前回からの「
妖怪つながり」と
地元
袋井にまつわるお話でしたが、要はお化けや妖怪
よりも怖いのは
人の情念である!というお話でした